社会や次世代のために貢献したい

お客様の悩み・状況

阿部さん(仮名)という70歳の方が来社されました。
阿部さんは、戦後に、金属加工の小さな会社(A社)を設立し、その後着実に会社を成長させ、現在は大きくしたその会社の代表取締役会長に就任しています。
毎期、安定した配当収入と報酬を得ていますが、相続のことを考えたときに、財産の多くが会社の株式であるため、漠然と、相続が大変になるのではないかとの不安を抱いて相談に来られました。
また、自分自身の生き方や、高度経済成長を支えてきた技術力に誇りを持っており、これからの技術開発にも貢献していきたい、自分がここまでの会社を築けたのは関連するさまざまな仲間のおかげなので、何か恩返しがしたいという気持ちを強くお持ちでした。
そこで、相続対策を行いながら、お世話になった金属加工業界に何か恩返しができないか、これからも高い技術力を持ち続けられるように何か貢献できないかといったご相談をいただきました。

解決内容

阿部さんの希望は、①相続税の負担を少しでも軽くしたい、②自分自身の財産を活用して、同業種の仲間のために、将来につながるような贈り物がしたいということでした。
そこで、特定の分野に対し、研究開発のための資金を提供する、非営利型の財団法人を設立してはどうかと提案いたしました。
阿部さんが保有するA社株式の一部をその財団に寄附することで、相続させる財産は減少してしまいますが、財団が、安定した配当収入を活用し、研究開発のための資金を提供することで、特定分野の技術力の向上に寄与することも可能です。
仮に、阿部さんが、その財団法人の公益性をより向上させるため運営にかかわりたいと希望するのであれば、会社経営からリタイアした後の生きがいを確保することにもつながります。
ただし、阿部さんの株式を財団法人に寄附した場合に、原則として、阿部さんに譲渡所得が課税されることとなります。
そこで、当社において、一定の基準を満たすためのアドバイスを実施し、譲渡所得が非課税になるよう所要の手続きを行った上で、寄附を行うこととしました。また、財団法人の運営組織がより適正なものとなるよう、継続してお手伝いをさせていただくことを提案しました。

さまざまな苦労をしてきた世代だからこそ次の世代には同じような苦労はさせたくない、自分自身が懸命に取り組んできた業種だからこそ、その業種の発展のためにこれからも貢献したいとお考えの方、あなたが生きた証を後世に遺すお手伝いをさせてください。
(参考条文:所得税法59条、租税特別措置法第40条)

投稿者:吉岡 潤 役職:税理士

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的な事例について述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。