託すことで、ペットとの生活を守る
お客様の悩み・状況
佐藤さん(仮名)という75歳の方が来社されました。
佐藤さんは、愛犬家で、今までたくさんの犬に囲まれて、家族と同様に楽しく暮らしてきました。
これからもそんな暮らしを続けていきたいと思っていますが、高齢となってきたため、病気、入院その他の緊急時に、愛犬が将来も安心して暮らしていけるのかと不安に思うようになってきたそうです。
将来、愛犬たちが安心して暮らせるように、すべての犬が天寿をまっとうできるようにと考えて、今のうちに何かできることは無いかというご相談をいただきました。
また、買主に捨てられた犬の話を聞くたびに不憫に思えてならないので、自分自身の財産を使って、そういった犬を救ってあげられる良い方法がないかというご相談をいただきました。
解決内容
佐藤さんの希望は、①相続開始後においても自らの財産を飼い犬のために使ってあげたい、②捨て犬を救うために使ってあげたいというものでしたので、民事信託を提案いたしました。
佐藤さんの財産の一部を愛犬の世話を引き継いでもらえる動物愛護の団体に託し、その財産を将来の愛犬の生活費用にあてるというものです。
佐藤さんが元気なうちは、愛犬の世話は自分で行えますので、受益者(その財産の給付を受ける人)を佐藤さんとし、入院その他の事情で佐藤さんが愛犬の世話ができなくなったあとは、次順位の受益者として愛犬の世話をしてもらえる団体を指定してはどうかと提案いたしました。また、信託の目的として、「愛犬の世話と、捨てられた犬等の救済に寄与すること」といった趣旨のものを加えてはどうかという提案をいたしました。
提案には概ね賛同していただけましたが、きちんと世話をしてもらえるか少し不安が残るという話がありましたので、信託の監督人をつけて、佐藤さんが考えているような信託の目的が達成できているように監督してもらうことも可能だと説明しました。
そうすることで、最後まで責任をもって愛犬の世話をすることができますので、憂いなく、日々を楽しみながら過ごすことができるのではないでしょうか。
ただし、信託の受益者には一定の課税が行われます。
信託契約を行う際には、課税関係や信託契約終了時までの権利関係を明確にしてから、当事者相互に納得した上で、取り組むことが重要です。
人にも、動物にも、自然にも優しい社会を作るため、さまざまな提案を行わせていただきます。持続可能な社会を作るため、できる限りのお手伝いをさせてください。
(参考条文:相続税法9条の2条、信託法131条、同法132条)
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的な事例について述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。